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石のさかい 公式コラム

五代目店主シリーズ|「奥津城」と「奥都城」
2026-05-28
カテゴリ:五代目店主の視点
オススメ
なぜ、「津」の字だったのか
神葬祭墓石に刻まれた「奥津城」の文字
先代の四代目は、「津」の字を刻んでいた。
先代の四代目は、
神葬祭の石碑に、
「奥津城」と刻んでいた。

近隣の石材店では、
「奥都城」と刻むところも多かった。

仕事を始めた頃である。

なぜ四代目は、
「津」の字を使うのだろう。

そんなことを、
ふと思うようになった。
問われるのを待っていた
神葬祭墓石の文字原稿
石に刻む前に、人は言葉を選ぶ。
神葬祭の石碑を建てる時、
まず施主へ、
刻む原稿を渡す。

すると多くの人が、
そこで気づく。

「あれ、“都”じゃないの?」

それも無理はない。

墓地には、
「奥都城」と刻まれた石碑も、
数多く建っていたからだ。

四代目は、
その時を待っていたようにも見えた。

施主が、
「なぜですか」と聞かれるのを。
「津」という字
「津」の字が刻まれた石碑文字
「津」には、渡し場という意味がある。
問われると、
四代目は静かに話し始める。

万葉集の話。

「津」という字の意味。

渡し場。

向こう側へ渡る場所。

話を聞きながら、
「なるほど」と頷く施主。

「では、“津”にしましょう」

と決める方がほとんどあったが。
「都」を選ぶ人
夕暮れの墓地風景
人それぞれ、見送る景色が違う。
一方で、

「難しいことは分からないけどさ」

そう笑いながら、

「“都”の方が、
賑やかそうでいいじゃない」

と話す方も。

「向こうへ行っても、
親父、
寂しくない気がするんだよ」

その言葉を聞きながら、
なるほど、
それもありだな、と私の顔もゆるんだ。

「津」にも、
「都」にも、
その人なりの願いがある。
私たちは、その想いに従うまで
石に文字を刻む石工道具
石工は、想いを刻む。
四代目も笑顔になる、

説明をした後、
選ぶのは、
施主自身だからだ。

私たちは、
その想いに従うまでである。

その意味を知った上で、
「都」を選ぶのであれば、
それもまた、
その人の想いなのだと思う。
今も変わらない
墓石建立を行う石工の風景
墓づくりは、共に考える時間でもある。
思えば、

私たちの墓づくりは、

どこか遠回りなのかもしれない。

ただ、

初代から、

ずっとそうだった。

文字。

石。

向き。

配置。

バランス。

陽の当たり方。

影の落ち方。

その場に据わった時の、
静かな収まり。

四代目もまた、
そうしたものにも、
長く時間を使っていた。

そしてそれは、
今も変わっていない。

五代目になった今も、
なるべく施主に考えてもらう。

もちろん、
押し付けるわけではない。

ただ、
意味を知り、
自分で選んだものは、
やはり想いが残る。

人は、
関わったものほど、
愛着を持つから。

私たちは、
その想いに従うまでである。
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