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石のさかい 公式コラム

刻まれる前の石碑
2026-04-14
カテゴリ:五代目店主の視点
夕暮れの光に包まれた墓地の風景
その人そのものが、
残ることがある。
思い出すということ
人は、亡くしたものを
失ったままにしておくことができない。

だから、思い出す。

何気ない会話。
ふとした仕草。
名前を呼ばれた、その声の温度。

どれも小さなものばかりで、
そのときは、気にも留めなかったような記憶。

けれど、時が経つほどに、
少しずつ、残るものが変わっていく。

余計なものが落ちて、
残るものだけが、静かに浮かび上がる。
ぬくもりの輪郭
夕暮れの墓地に揺れる草の風景
思い出すたびに、
こちらの気持ちだけでなく、
あの人の気持ちまで考えるようになる。

あのとき、どう思っていたのか。
なぜ、あんな言葉をかけてくれたのか。

答えは、どこにもない。

けれど、考えることで、
少しずつ近づいていく。

それは、
包まれていたぬくもりを、
もう一度たしかめるような感覚に近い。
残っているもの
やさしい笑顔。
温かな声。
そこにあった空気。

ふとしたときに思い出す。
そのたびに、少しだけ鮮明になる。

曇っていたものが、
静かに磨かれていくように。
光はもともと
磨けば、光る。

けれどその光は、
最初からそこにあったものだ。

ただ、気づいていなかっただけで。

小さな記憶の中に、
確かに宿っていたもの。

それを、もう一度見つめ直すことで、
はじめて、その輝きに触れる。
据わるもの
何度も思い出し、
何度も考え、
何度も心の中で触れ続けたものは、

やがて一つのかたちを持つ。

それは、誰かに見せるためではなく、
自分の中に、静かに据わるもの。



それはきっと、
目には見えない石のように、
そこに在り続ける。

※本稿は、川上千春さんの「ぼくの宝石」に触れたことをきっかけに、生まれたものです。


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